概要
一般財団法人高専インフラメンテナンス人材育成推進機構では、地元のインフラを守る「名もなき貢献者」を顕彰することにより、維持管理の重要性に光を当て、インフラ長寿命化社会への変革を目指すことが重要であると考え、道路橋の適切な維持管理による長寿命化を訴え続けてきた当機構理事長・西川和廣の名を冠した賞を創設することとしました。
西川和廣賞は以下の3部門から成ります。
- 「予防保全部門」 社会インフラの劣化・崩壊などを未然に防ぐことに貢献した個人もしくは団体に授与される
- 「技術開発部門」 地域ニーズに合致した社会インフラの長寿命化に資する設計・施工・維持管理に関する技術・広報・発注形態等を実装した個人もしくは団体に授与される。
- 「人材育成部門」 持続的な社会インフラの建設・維持・管理を可能とするための人材育成・人材開拓・市民啓蒙などの活動を実施した個人もしくは団体に授与される。
第1回受賞者
当機構理事長を委員長とする選考委員会にて審査を行った結果、栄えある第1回(2025年度)は以下の方々に授与されることに決まりました。
部門 | 受賞者 | 受賞内容 |
予防保全部門 | 有限会社櫂舟歩道 | タブレット点検で健全度判定IVを発見した事例 |
同 | 新潟市土木部土木総務課 | タブレット橋梁点検システム導入によるコスト縮減と担い手確保 |
技術開発部門 | 福井県工業技術センター建設技術研究部 林 泰正 氏 | メンテナンス性に優れた伸縮装置の開発 |
人材育成部門 | CATS-B(橋守隊) | 協働によるインフラメンテナンス活動の実践と担い手候補の発掘 |
受賞内容
各受賞者の授賞理由と内容は以下の通りです。
予防保全部門 | 予防保全部門 |
有限会社櫂舟歩道 | 新潟市土木部土木総務課 |
タブレット点検で健全度判定IVを発見した事例 | タブレット橋梁点検システム導入によるコスト縮減と担い手確保 |
H30/11に新潟市で行われた、タブレット橋梁点検の実証実験にて、それまでコンサル点検で発見できていなかった、結果的にⅣ判定となった損傷を発見し、迅速に対応した。 発見後速やかな管理者への報告、管理者と点検コンサルとの連携による速やかな判断により、発見後約24時間で交通規制に至った。 点検が専門ではない業者であっても、問題意識をもって仕事をし、異常を発見したら躊躇なく報告したことで、危機を未然に防ぐことができた。 | 新潟市管理の橋梁のうち、約7割に当たる小規模橋梁2700橋について、1巡目の建設コンサルによる概略点検から、2巡目は建設業者によるタブレット端末を用いた簡易点検に切り替え、結果として点検費用を約9割削減することができた。浮いた費用は予防保全の原資となり得るものである。 長岡高専・井林教授が開発したタブレット点検システムを、他の採用実績に比べはるかに多くの橋梁に適用しており(2巡目約4700橋に採用のうち約6割が新潟市)、新技術を積極的に導入する意思が感じられる。また、建設業者の技術の底上げにもつながっている。 |


技術開発部門 | 人材育成部門 |
福井県工業技術センター建設技術研究部 林 泰正 氏 | CATS-B(橋守隊) |
メンテナンス性に優れた伸縮装置の開発 | 協働によるインフラメンテナンス活動の実践と担い手候補の発掘 |
橋梁の桁端部は、止水機能の低下に伴って漏水し、橋台に土砂堆積や雨水の滞水等が発生する。これが桁端部の損傷や支承の機能低下を招いている。 伸縮装置は、一般的には専門業者によって開発されるが、受賞者は、道路管理者の立場で自らの業務上の経験に基づいてメンテナンスに優れた伸縮装置の開発を行い、特許を取得した。また、供用されている地元の橋梁にも開発した伸縮装置が採用された。 | 橋を主なフィールドとして、「楽しみながら」市民レベルのインフラメンテナンスを実践することで、土木インフラの大切さを共有するための活動を10年間行っている。 山口県周南市を拠点に、産官学民が協働して、橋の清掃、橋やインフラに親しむイベント、広報活動など手作りで幅広く活動を行っており、活動を通じてインフラに興味を持った小中学生らが、自身の将来の選択肢として徳山高専をはじめとする土木系学科へ進学する例が数多くみられることから、次世代育成に貢献していることを特に取り上げて、表彰対象としたい。 |


表彰
2025年7月31日に行われたKOSEN-REIMフォーラム2025 OSAKA において、来場された林様とCATS-B(橋守隊)の今井 努 様に、当機構理事長・西川和廣から記念の盾が贈呈されました。


福井県工業技術センター建設技術研究部 林 泰正 様


CATS-B(橋守隊) 今井 努 様
(追記)
当日ご都合により来場できなかった有限会社櫂舟歩道様、新潟市土木部土木総務課様には、後日当機構理事・井林 康から記念の盾を贈呈いたしました。


有限会社櫂舟歩道 代表取締役 山田 一二史 様


新潟市土木部土木総務課 課長 小林 久剛 様 および同課の皆様